8Jun
冬のソナタで人気アイテムとなった「ポラリスネックレス」の独占販売権を持つ「エムトレーディングドットコム」が、東京都内の宝石卸売会社など2社を相手取り計2000万円の支払いを求める損害賠償請求訴訟を起こした。訴えによると、同社は02年12月に同ネックレスなどのデザインの意匠権や著作権登録をしている韓国の宝石製造販売会社から日本国内での独占販売権を取得。その後、被告の2社が展示会などで偽物を販売していることが分かり抗議したが、販売が続けられたという。同社はNHKの衛星放送で放映開始後、同じモチーフの携帯ストラップを含め累計26万個を販売したらしい。
毎日新聞のネット記事では2社の名称は書かれていなかったが、韓国の新聞記事によると訴えられたのは、台東区上野の「株式会社Ⅰ雲商会」と愛媛県松山市の「M田宝飾株式会社」らしい。
このポラリスネックレスを販売している「ゴールデンデュー(골든듀)」は、1989年に設立された韓国最初の宝飾ブランド(外資は除く)で、設立当初のキャッチコピーは、「あなたも結婚前に宝石を持てる」だったとか。
ちなみにゴールデンデューの母体は、1972年に設立された収集用の記念通貨や貨幣を専門と取り扱う「ファドンヤンヘン:花洞洋行(화동양행)」という会社。貨幣事業の経験と知識を土台に「ゴールデンデュー」というブランドでジュエリー分野に進出して、現在韓国内の有名デパートなどに50店舗、年間来客数4万人を超える韓国内最大のジュエリーブランドになっている。ポラリスネックレスの製造も同社が行い、ゴールデンデューで販売という形になっている。韓国内ではこのネックレス、日本の価格より2割以上安く販売されている。
ところでこのエムトレーディングドットコムという会社、HP上で「、ポラリスネックレスシリーズの商品は韓国Goldendew社と弊社が日本国内の独占販売契約を交わしておりますので、並行輸入品はあり得ません」と言っているが、「並行輸入があり得ない」ってどういうことなんだろう? 意味がわからん。そんなことができるなら、ブランド品のバックとかの並行輸入品なんてブランドメーカー各社がとっくにやってると思うんだが……どんな法律で並行輸入品を阻止できると言ってるんだ??
ちなみに公正取引委員会のHPで「独占禁止法」に関する部分を読むと、「並行輸入の不当阻害」という部分があり、
1)総代理店契約が輸入品について行われる場合において,第三者が契約当事者間のルートとは別のルートで契約対象商品を輸入することがある(以下これを「並行輸入」といい,商標権を侵害しないいわゆる真正商品の輸入を前提としている。)。 並行輸入は一般に価格競争を促進する効果を有するものであり,したがって,価格を維持するためにこれを阻害する場合には独占禁止法上問題となる。
と書かれている。つまり偽者でなければ、韓国内で日本より2割以上安く販売されているポラリスネックレスを業者が輸入にして販売することを止めることはできないはず。
さらに独占禁止法上問題となる場合として
1)海外の流通ルートからの真正商品の入手の妨害
並行輸入業者が海外の流通ルートから真正商品を入手してくることを妨げて,契約対象商品の価格維持を図ろうとすることがある。このような行為は,総代理店が取り扱う商品と並行輸入品との価格競争を減少・消滅させるものであり,総代理店制度が機能するために必要な範囲を超えた行為である。 したがって,総代理店又は供給業者が以下のような行為をすることは,それが契約対象商品の価格を維持するために行われる場合には,不公正な取引方法に該当し,違法となる。またこれに関連することとして、(1)並行輸入業者が供給業者の海外における取引先に購入申込みをした場合に,当該取引先に対し,並行輸入業者への販売を中止するようにさせること、(2)並行輸入品の製品番号等によりその入手経路を探知し,これを供給業者又はその海外における取引先に通知する等の方法により,当該取引先に対し,並行輸入業者への販売を中止するようにさせること――となっているので、商品の入手を不当に妨害することもできないはず。
2)販売業者に対する並行輸入品の取扱い制限
並行輸入品を取り扱うか否かは販売業者が自由に決定すべきものである。総代理店が並行輸入品を取り扱わないことを条件として販売業者と取引するなど,販売業者に対し並行輸入品を取り扱わないようにさせることは,それが契約対象商品の価格を維持するために行われる場合には,不公正な取引方法に該当し,違法となる。
3)並行輸入品を偽物扱いすることによる販売妨害
商標権者は,偽物の販売に対しては商標権侵害を理由として,その販売の差止めを求めることができる。 しかし,並行輸入品を取り扱う事業者に対し,十分な根拠なしに当該商品を偽物扱いし,商標権の侵害であると称してその販売の中止を求めることは(※l),それが契約対象商品の価格を維持するために行われる場合には,不公正な取引方法に該当し,違法となる。
※1このような行為が行われると,当該商品が真正商品であり,並行輸入業者がその旨を証明できるときであっても,当該小売業者は,訴えられること自体が信用を失墜するおそれがあるとして並行輸入品の取扱いを避ける要因となる。
などなど並行輸入品に対しては、公正な価格競争を維持するために総代理店の契約ならびに販売に関しては厳しく指針が示されていて、独占販売契約なんてあまり法的な拘束力はないようだ。
今回の提訴は業者が偽者を扱っていたということだが、事実はどうなんだろう? 訴えられた会社もそれなりに宝飾には販売実績があるようなので、安易に偽者を扱うとも思えないのだが……何にしても並行輸入品は法的にはOKだってことはわかった。
冷静に考えると、エムトレーディングドットコムがHP上で「、ポラリスネックレスシリーズの商品は韓国Goldendew社と弊社が日本国内の独占販売契約を交わしておりますので、並行輸入品はあり得ません」と言っているのって、
3)並行輸入品を偽物扱いすることによる販売妨害
に思いっきり抵触するような気がするのだが……今回訴えられた2社はともかく、自分のとこ以外のポラリスシリーズが全部偽者って言ってるようなもんだもんなぁ。