14Aug

Dellアンバサダープログラムで借りているXPS 15の「プラチナ・4Kディスプレイ・タッチパネル」モデル。今回はXPS 15が搭載するCPUのIntel Core i7-7760HQ + GPUのnVIDIA GeForce 1050のパワーを生かした動画のエンコードによる出力時間をテストしてみた。
動画のエンコードソフトには、各種条件やエンコーダーを使ったテストができる株式会社ペガシスの動画変換・編集ソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 6」を使った。
XPS 15の4コア8スレッドCPUのCore i7 7760HQとの比較に、HPの「EliteBook 810 G2」(2コア4スレッドのCore i3 4010Uを搭載)と「Pavillion Desktop 500」(4コア4スレッドのCore i5 4460を搭載)でも同様に動画のエンコード時間を計測した。HPの2機種はどちらもインテルの第4世代(Haswell)のCore iシリーズなので、QuckSyncビデオによるH.264/AVCのハードウェアエンコード/デコードに対応しているが、H.265/HVECのエンコードはCPUによるソフトウェア処理(X265エンコーダー使用)で計測している。
フルHD動画をH.264/AVCでエンコードする
最初は4分間のフルHD動画を編集し、H.264/AVC形式のフルHD動画として出力するテスト。まずはソX264エンコーダー(フトウェア処理によるエンコード処理)を使用した場合の時間を比較する。フルHDでH.264/AVC形式で4分間の動画を出力するのにCore i3 4010Uでは1676秒と途方もない時間がかかり、Core i5 4460でも412秒(約7分)と実時間の2倍近い出力時間がかかる。一方、XPS 15が搭載するCore i7 7760HQの場合は308秒(約5分)とほぼ実時間に近い時間で出力できる。3世代前のCPUとの比較とはいえ、Core i3 4010U比で約5.5倍、Core i5 4460比で約1.4倍と高速で、さすがは4コア8スレッドCPUといったところ。
IntelのCPUが搭載するハードゥエア・エンコーダー/デコーダーのQuickSyncでエンコードした場合、Core i3 4010Uでは275秒、Core i5 4460が92秒、Core i7 7760HQが82秒となり、ソフトウェア・エンコードと比較してCPU間の性能差はグッと縮まる。X264とQuickSYncとの速度向上比だと、Core i3 4010Uが約6倍、Core i5 4460が約4.5倍なのに対して、Core i7 7760HQでは約3.8倍と差は小さい。またCore i5 4460とCore i7 7760HQの差もそれほど大きくないので、フルHD動画をH.264/AVCでエンコードするなら、Core i5クラスでも十分な性能といえる。
注目なのはXPS 15が搭載するnVIDIAのGPU「GeForce 1050」を使ったnVIDIA製のハードゥエア・エンコードエンジン「NVENC」を使った場合の処理の速さ。QuickSyncより約8%高速でエンコードできている。NVENCはGPUを描画処理ではなく演算プロセッサーとして利用するのだが、QuickSyncのような映像処理専用ハードウェアを超えるその処理速度には驚く。
またX264エンコーダーやQuickSyncでエンコード時は、CPU性能をフルに使うためにCPU使用率は100%近くなり、エンコードをバックグランドにして他の作業をするとかなり重くなるのだが、NVENCではCPUの使用率は40%程度に抑えられ、GPUが60%程度の使用率でエンコードが進む。CPUの使用率が40%程度だと、バックグランドでエンコードしながら他の作業をしても動作が重くなる事もなく十分実用になる。この辺りはCPU+外付けGPU構成のXPS 15のアドバンテージの1つ。
フルHD動画をH.265/HVECでエンコードする
次は最新の圧縮形式のH.265/HVECを使って、同じくフルHDの動画(4分間)を出力した場合の比較。第4世代のCore iシリーズはQuickSyncがH.265/HVECには未対応なので、X265エンコーダー(CPUによるソフトウェア・エンコード)での計測となる。H.265/HVEC形式はH.264/AVCに比べて高圧縮で高画質で、ファイルサイズは小さいのに画質の良いのが特徴だが、その分だけエンコード処理は複雑で、3機種ともX264エンコーダーと比べてX265エンコーダーでは2倍程度の出力時間がかかっている。
XPS 15のCPUであるCore i7 7760HQ内蔵のQuickSyncを使う場合はH.265/HVECに対応していることもあり、出力時間は122秒と実時間の半分程度で、X265エンコーダーとの比較で約5.7倍の高速。GPUを使うNVENCの場合は約76秒とさらに高速で、X265エンコーダー比で約9.1倍、QuickSync比でも約1.6倍とGPUによるエンコード処理の高さが分かる。
4KビデオをH.264/AVCで圧縮した場合はどうか?
最近録画できるカメラも増えてきた4K(3840✕2160ドット)の映像を出力した場合はどうなのか? 4KはフルHDとの比較で縦横共に2倍の解像度を持ち、それだけ映像のエンコード/デコードにもCPUの性能が必要となる。4Kでは1分間の動画の出力時間を比較してみた。
比較用にCore i3 4010UでQUickSyncを使ってH.264/AVC形式で4K映像を出力してみたが、1分間の動画出力に1528秒(約25分間)と、とても実用的ではない結果となった。
XPS 15では、X264エンコーダー、QuickSync、NVENCの3つのエンコーダーでの出力時間を比較した。また4K出力の場合、GeForceのGPUを使うCUDAで映像をデコーダーするパターンも試せたので合わせて計測してみた。
さすがに4K解像度の動画となると、Core i7 7760HQと言えどもソフトウェア処理のX264エンコーダーでは実時間の7倍近い416秒(約7分間)とかなりの時間がかかる。CUDAを併用した場合の方が6%程度余分に時間がかかるのはちょっと謎ではあるが何度か試しても結果はほぼ同じだった。
QuickSyncを使う場合は140秒(約2分)と、ソフトウェア処理に比べて3倍近く高速で処理できるが、それでも実時間の2倍程度の出力時間がかかり、やはり4K映像はまだまだPCでは高負荷な処理だ。CUDAを使ってGPUで映像のデコード処理をし、エンコードをQuickSyncを使うパターンだとさらに約1.7倍高速で出力できる。圧巻なのがNVENCの場合で、約1分の4K映像を約80秒とほぼ実時間に近い速度で出力している。
これからの主役になりそうな4K動画をH.265/HVECで出力する場合
最後にテストしたのが4K映像(1分間)をH.265/HVECで出力した場合。さすがにこの処理は時間がかかるので、XPS 15のみで条件を変えてテストしてみた。X265エンコーダーの場合は映像のデコードにCUDAを使用をするしないに関わらず約900秒前後(約15分前後)と、さすがにこれは実用的ではない出力時間。一方QuickSyncでエンコードする場合はCUDAの使用の可否に関わらず、平均150秒前後(約2分半)とまずますの速度で素箇力できる。4K映像だと1秒に60Mbps~90Mbps程度のデータとなるのを考えれば、現状のノートPCベースでの映像出力では実時間の2倍強は十分実用的な性能。
ここでも圧巻なのはNVENCをエンコーダーにした場合で、H.264/AVCの場合と同じ時間(80秒)で出力している。フルHDの場合もNVENCはH.264/AVCとH.265/HVECのエンコード時間は同じだったので、GeForce 1050のパワーに驚かさせられる。
一昔前ならノートPCでCPU内蔵GPUでなく外付けGPUを搭載するのは、ゲームユーザーなど3Dグラフィックス処理の高速化が主目的だったが、現在では映像処理やその他計算処理でも外付けGPU搭載は重要な意味を持っている。今回はテストしなかったが、TMPGEnc Video Mastering Works 6ではエンコーダーやデコーダーだけでなく、映像のフィルター処理にもCUDA(すなわちXPS 15内蔵のGeFoece 1050)を使って高速処理ができるので、XPS 15の動画編集能力はかなり高い。ノートPCでモバイル環境でも十分映像編集に耐える性能だと言える……ますます手元に1台欲しくなる(笑)