16Aug
XYZprintingの「ハンドヘルド 3Dスキャナー 1.0A (3SH1A)」に付属の3Dスキャンソフト「XYZscan」を前回インストールしたので、今回はそれを使って3Dスキャンをしてみる。
Kiyologでは旧バージョンの「ハンドヘルド 3Dスキャナー (3SH10)」とXYZscanのバージョン「2.0.12」と「2.1.3」でスキャンしたレビューも掲載しているので、今回は過去のバージョンと3.3.3との違いも含めて紹介する。
XYZscanを起動すると、まずこの画面が表示される。過去のバージョンではいきなりスキャン画面になったが、3.3.3では「スキャン手順を確認する」か「スキャンを開始」するかの選択画面になる。
UIは従来に比べて親切になったのだが……
スキャン画面の基本的なレイアウトは従来のバージョンと大きな変更はない。左上に3Dスキャンのステップ(①~④)、その下にスキャンモード、さらにその下に「スキャン開始」ボタンがあり、画面右半分はプレビュー画面になっている。
バージョン2.xとの大きな違いは、スキャン画面で今までにスキャンした3Dファイル(STL/OBJ形式)のファイルを読み込む「開く」ボタン、一番下に設定を変更するギアのアイコンのボタンが備わり、プレビュー画面にはオブジェクトや人などスキャン対象として認識しているものとの距離とスキャン対象のターゲットを示す照準マークが表示されるようになった点。
ギアアイコンをクリックして表示される設定画面では、言語、音声、出力形式(テクスチャー付きか着色)、フルスキャンの設定で利き手(右手か左手)と品質(低・中・高)が選択できる。フルスキャンの利き手の設定は、スキャナーをどちらの手で持つかの設定で、右手に変更すればフルスキャンモード時のみスキャナーを右手で持った状態で正しくスキャンできるようになる。個人的にはこの設定はヘッドモードやオブジェクトモードでも対応してほしい。ノートPCとスキャナーを両方持たない場合、利き手が右手の人なら右手に3Dスキャナーを持つ方が自然に操作できるからだ。
オブジェクトモードでは、従来と同様にスキャン対象に認識すると緑の枠で四角く囲まれる。この緑の枠線で囲まれた状態で「スキャンを開始」をクリックするか3Dスキャナーのボタンを押すとスキャンを開始する。
バージョン2.xまではプレビュー画面に特に文字で情報は表示されなかったが、3.3.3ではプレビュー時もスキャン時もスキャン対象がスキャナーから遠い場合には「遠すぎる」
逆に近い場合は「近すぎる」
さらに「ピントずれ」といった具合に、スキャンの状況を表す情報が画面に表示されるようになった。ちなみにこの「ピントずれ」というのはスキャン対象を見失ったトラッキング・ロストの状態を表していて、いわゆる本当にピントがズレている訳ではない。
肝心のスキャン性能は今までと変わらずで相変わらずトラッキング・ロストしやすい
スキャンを開始すると、プレビュー画面の周囲が赤く囲まれスキャン中であるのが一目で分かる。バージョン2.xではプレビュー画面の上下にかなり太い赤い帯が表示されていたのに比べると、やや控えめなスキャン中の表示に変わった。
カメラが認識して取り込んだ部分は、プレビューウィンドウにカラーで表示される。グレーの部分はカメラが取り込んでいない部分。3Dスキャナーを動かすか、あるいは被写体を回転させて取り込んだカラーの部分が全体像になるまで全体をくまなくカメラでなぞって取り込んでいく。
XYZpritingの3DスキャナーはインテルのRealSense技術を使って、カメラが捕らえた被写体と背景を別々に認識しながら、被写体の形状+奥行きの情報を1秒間30枚のスピードで重ね合わせながら3Dデータを生成する。このため、カメラが急に大きく移動すると被写体の見失い重ね合わせの処理がうまく行かず、画面上の3D形状がカメラの動きに追従せず止まったままになり、画面に「ピントずれ」と表示される。
この場合カメラが被写体を見失った位置にカメラを戻せば続きからスキャンが継続されるのだが、スキャンを再開するにはカメラの位置やアングル、距離が一致しないとならず、一度見失うと再開はかなり難しい。バージョン2.xより多少は再開のしやすくなったが、それでもうまく再開できない場合も多く、諦めて再度スキャンをやり直した方が早いのは従来のバージョンを同様。再スキャンは画面の「リトライ」をクリックするか、3Dスキャナーのボタンを2秒以上押すと再開するか続行するかの選択ができるので、そこで再度2秒以上ボタンを長押しする。
UIは以前に比べて親切になったが、肝心のスキャン性能というかトラッキングの性能は相変わらずイマイチ。もうちょっと何とかならないのだろうか?また黒髪が苦手なのも変わらずで、チュートリアル動画では時間はかけてゆっくりスキャンすれば黒髪もスキャンできるように説明しているが、時間をかけてゆっくりスキャンしてもうまく黒髪を認識できないケースも多く、日本人のスキャンは苦手なのも従来と同じ。
ちなみにフルスキャンモードは、離れた距離から全身をスキャンする訳ではなく、ヘッドモードの距離で全身をスキャンする、つまり近くで足下から頭の上まで取り込んでスキャンする。大きなサイズをスキャンできるのは利点だが、至近距離でスキャンするためデータサイズも大きくなる。3Dプリンターでの出力を前提に全身をスキャンするなら、出力サイズは高さが最大でも15cm前後が最大だろうから、ヘッドモードの解像度で全身をスキャンするだけの精度が必要なのかちょっと疑問。もうちょっと簡単に全身をスキャンできる方が用途は広がると思うのだが……。
スキャンの完了・終了は画面の「停止」ボタンをクリックするか、スキャナーのボタンを一度押す。
XYZScanでそのまま結果をプレビュー
スキャンを停止すると、スキャンしたオブジェクトが画面にプレビュー表示される。バージョン2.xではスキャンアプリとこのスキャン結果を表示するアプリが別々になっていて、データの引き渡し時にエラーになったり、完全に360度スキャンしていないデータだとエラーが頻発したのだが、同じアプリでそのままスキャン結果をプレビューするように改良された為か中途半端な取り込みでエラーは減っている。
この画面で画面左の「保存」をクリックするとSTLかOBJかPLY形式でデータを保存できる。保存時にテクスチャー付きで保存するかどうかは画面したのギアアイコンの設定画面で変更できる。
その下の「編集」は後述するとして、「もう一度」は再度スキャンをする場合にクリックする。
プレビュー画面右下の3つのアイコンは左の「カラーパレット」のアイコンがテクスチャーの明るさ/コントラスト/彩度の変更、真ん中がプレビューのアングルをワンクリックで変更、右側の「ブラシ」のアイコンはプレビュー画面をテクチャー付きと着色の切り替えとなっている。
この明るさ/コントラスト/彩度の変更機能はスライダーを変更しても、スキャン後のテクスチャーの様子が変わるだけでスキャンした3Dデータの形状自体は何も変わらない。スキャン後のテクチャーの調整より、スキャン時の明るさ/コントラスト/彩度を変更できるようにした方がスキャン結果にも影響して、取り込むモノによっては良好なスキャンができるような気がするのだが……特に黒髪が苦手なこのスキャナーでは日本人をスキャンする為にもスキャン時にこの機能が付くと結果がかなり変わると思うだけに、次のバージョンでは対応してほしい。
待望の編集機能に対応?
XYZscan 3.3.3の目玉機能がスキャン後のオブジェクトの編集機能に対応。スキャン結果のプレビュー画面にも「編集」のボタンはあるのだが、これをクリックすると
「XYZmakerを起動する」というボタンが登場する。どうやら編集はXYZmakerにデータを転送して、XYZmaker上で作業をすることになるらしい。この機能を使うにはXYZmakerをインストールしておく必要がある。XYZmakerはXYZprintingが無料で提供している3Dソフトなのだが……
XYZmakerにはオブジェクトの編集機能と言えるようなものはほとんどない。もともとのコンセプトが初心者が3Dデータを作れるように積み木感覚で四角とか球体、円柱を組み合わせたり、組み合わさった部分を切り抜く機能と、文字を立体化する機能程度しかないからだ。
なので、こうした不完全なデータをXYZmakerで編集するといってもほとんどできる事はない。これが3D SYSTEMSのSENSE付属のソフトなら、余分な部分を削ったり、穴の空いてるところを埋めたりして、3Dプリンターで出力できる形状に編集できるのだが、XYZmakerにはその手の機能はない。
結局はハンドヘルド3Dスキャナーが1.0Aに、XYZscan 3.3.3になり、編集機能でXYZmakeと連携できると言っても、3Dプリンターに出力できるようなデータにするには、なるべく完全な形状をスキャンするしかないのが今まで同じ。
ハンドヘルド3Dスキャナーがフルスキャン対応の1.0Aになり、XYZscanもバージョン3.xで編集も対応と言うことで、1年振りに買い直して期待したのだが、基本的な部分は1年半前と同じでややガッカリ。スキャン時のトラッキング・ロストから復帰しにくいのと、スキャン後のデータの削りと穴埋め機能さえあれば現状でもそれなりに使えるだけにバージョンアップで何とか対応してほしい。現状では前回の30点がUIの改善で35点になった程度で、まだまだ人にはとてもお薦めできない。
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