26Aug
2015年7月19日のKiyologでダヴィンチ Jr.のフィラメントが送り出せなくなり、フィーダーユニット辺りからコツコツと異音がする件を書いた。その後、XYZprintingに修理を依頼し、修理から戻ってきたので、また出力時間が6時間くらいのデータを出力すると、4時間経過したくらいからまた同じような異音がして、結局大きなデータは安定して出力できず、原因がわからないことも追記した。
当時はフィーダーのギアが何らかの原因で滑り、エクストルーダーにフィラメントが送れない為に出力が失敗すると思い、RepRap系の機種やMakerbotのReplicator等で使われているフィーダーのギアに交換すれば、フィラメントがよりしっかり送り出せるのではないか?と考えた。
ダヴィンチシリーズとダヴィンチJr.シリーズは出力の構造が異なる
あれから1年が経過し、いろいろ調べていく中で分かったことがある。まずダヴィンチ Jr.シリーズは上位機種のダヴィンチシリーズと構造がまったく違うこと。購入当初は単にコストダウンとスケールダウンして小型軽量化した製品がダヴィンチ Jr.だと思っていたが、ダヴィンチシリーズとダヴィンチ Jr.シリーズは3Dプリンターの構造がまったく違う。
ダヴィンチシリーズやMalerbotのReplicatorなどのエクストルーダーはダイレクト方式(図の左)と呼ばれるタイプで、フィラメントを引き込むフィーダーユニットとフィラメント溶かすホットエンドが1つになっており、フィーダーが引き込んだフィラメントを直下のホットエンドで溶かして出力する。
一方、ダヴィンチJr.シリーズが採用するのはボーデン方式(図の右)と呼ばれるタイプで、フィラメントを送り出すフィーダーとフィラメントを溶かすホットエンド部分は一体型になっておらず、フィーダーが引き込んだフィラメントをチューブを通して接続したホットエンドに送り込む。
ボーデン方式はフィーダーユニットをエクストルーダー部分に搭載しないので、左右に頻繁に移動するヘッドの部分を軽量化できるため動きが軽くなり、速度や精度の安定性が高まるという事らしい。またホットエンド部分に不具合が生じた場合もフィーダー部分がないので交換が簡単になり、コストも下がる。XYZPrintingでもダヴィンチJr.のエクストルーダーは交換用が発売されているが、ダヴィンチ用は発売されていないのもそういう理由かららしい……ただし米国のXYZprintingではダヴィンチシリーズの交換用エクストルーダーも発売している。
一見ボーデン式を採用したダヴィンチJr.に欠点はないようだが……
これだけだとボーデン式にはメリットはあるがデメリットはなく、従来のダイレクト方式の方がデメリットがありそうなのだが、実際はそうでもないらしい。ボーデン式はフィーダーユニットとホットエンドが離れいる構造上、フィラメントリールからフィーダーが引き込んだフィラメントを機種によっても差があるがダヴィンチJr.で言えば30㎝近く離れたホットエンドに押し込まなくてはならない。
3Dプリンターを使っていくうちに分かったのだが、同じフィラメントを使っていても長時間印刷しているとホットエンドの温度が微妙に変化してうまくフィラメントが溶けない瞬間があったり、カスが溜まったりでスムーズに出力しにくくなる事がある。ダイレクト方式はほぼ直下にホットエンドがあるので、こうしたフィラメントがうまく溶けてないときでもある程度強引いホットエンドにフィラメントを押し込んで何とか出力できている事があるらしい。
一方ボーデン方式は直径1.75mmのフィラメントを30cmとかの長い距離を狭いチューブを介してホットエンドを供給するため、ホットエンドがうまくフィラメントを溶かせないときに送り出せないフィラメントがチューブの中で行き場を失ってしまう。結果としてそれがフィーダーユニットへしわ寄せとなってしまい、フィーダーのギアが滑って空回りし、フィラメントを送り出せず、フィーダーユニットから異音を発生させる原因になってしまう。
こう書くと今度はボーデン式の方が問題がありそうだなのだが、これがまたそうでもない。ダヴィンチJr.以外の他社製の3Dプリンターでボーデン方式を採用する機種は、ほとんど場合はホットエンドの温度を設定できる機能がある。フィラメントがうまく溶けないとか温度が下がったりする場合に、フィラメントを溶かす温度や射出速度の設定を最適なに調整すれば、ある程度この問題は回避できるらしい。最近聞いた話では、同じメーカーの同じフィラメント素材でも色によって最適に溶ける温度が違うなんてこともある。また室温やプリンター内の温度でもこれは変化するため、環境やフィラメントごとにいろいろ試行錯誤して最適なパラメーターを見つける事が安定した出力につながるらしい。
ところがダヴィンチJr.が使用する出力ソフトXYZwareは、出力速度は3段階で調整きるが溶解温度はまったく設定できない。このため、長時間出力時に向けて少し溶解温度を変更しておくとかいう対処ができない。本来はXYZwareが出力データに応じて、溶解温度やエクストルーダーのファンをコントロールして温度をもう少し柔軟に制御できればいいのだろうが、ダヴィンチJr.はフィラメントの溶解温度をNFCタグ上に記録していて、そのデータを参照するらしく、こうなるとユーザーができる事は何もなくなってしまう。結果として、長時間出力時にフィラメントが送り出せなくなって失敗し、クレームの嵐という悪循環になってしまっている。
エクストルーダーの改良やXYZwareの設定、ファームウェアの更新等で対処できるのかもしれないが、今のところXYZprintingからそういう話もないので現状は長時間出力は難しい機種ってことになってしまっている。最近はクリーニングフィラメントという溶け切らずにホットエンドに残ったカスを巻き込んだまま出力できるフィラメントも出てきているのだが、この手のフィラメントは1回毎に使いきりで長さも20㎝前後と短くて、ダイレクト方式では使えるがボーデン方式ではフィーダーからの距離があり過ぎて使えない。
あとPLA素材のみ、しかも純正フィラメントしか使えないダヴィンチJr.には関係ないが、ボーデン方式は柔らかめや硬めフィラメントとか一部の特殊素材はフィーダーからホットエンドまでの距離が長いため使えないものも多いらしい。逆にダイレクト式は引き込んだ素材をすぐにホットエンドで溶かすので使える素材に柔軟性がある。とは言え、ヘッドが軽いために出力精度がダイレクト式より高い機種が多いのも事実なので、その辺はどんな素材でどんなものを作るかで機種を選べばいいんだと思う。とりあえずダヴィンチJr.のフィラメントが送り出せなくなる原因は、こういう事らしい。とりあえず何も解決策がなくて残念。
【追記】
当初思ったドライブギアの交換も1つの方法らしく、MK7のギア(特に小嶋技研のステンレス製0.5mmピッチのもの)に変えると、フィラメントが送れなくなる不具合が解消されたという人もいる。
またコメントに書かれているテフロンチューブの先端とノズルが離れているので、そのギャップを埋める加工も効果があると思うが、初心者には難易度高めかも。ただこのギャップの問題はda vinci 1.0と2.0系にもあり、dav vinciだとエクストルーダー内にガイドを挿入しちゃう手もあるのだが、ボーデン方式のJr.系だとこの方法は使えないっぽいので悩みどころ。
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